スペシャル対談 ものづくりを考える VOL.2

今回の対談では、創業してから商業印刷に特化してこられた「伊藤バインダリー」の伊藤社長に、ゼロから自社商品を作ることの大変さ、また「ものづくりコラボレーション」というプロジェクトへの参加から、世界へ商品を広めるまでのプロセスなどその時々の実体験と思いを語っていただきました。

プロジェクトへの参加が変えたもの?

工藤
「ものづくりコラボレーション」で出会ったデザイナーとの会話で、驚きとか、印象的なものはありましたか?
伊藤
「すべて、これは忘れてください」と一蹴されたうえに、「伊藤バインダリーの文化ってなんですか?」とパッと振られサッと答えられなかったのが驚きでもあり、強く印象に残ってることですね。でもその後、工場を見学されながらいろいろな話をしていく中で、昔から職人が印刷物の断裁で出た余り紙を使ってサイズや紙質、色など不揃いなメモを作っては玄関に置いたことや、またそれを今でも続けていて、近隣の方に配ったり、メモ帳としてストックしてあるものを「いいよ、持って行って」という感じで差し上げたり、そうすることでみなさん非常に喜んでくれるんですよ、と話をしていたところ、「それが文化ですよ」とその話をきっかけに「きちんとしたメモ帳を作りませんか」と言ってくださって、そこから今回のプロジェクトが案として出てきたんです。
工藤
そうだったんですね。その後は?
伊藤
試作で作った下駄と同じ廃材を使って、「その素材を使ってメモ帳を作ってみるか」ということになりドローイングパッドの原型は、次の会議の時にはほぼ今の形で試作を上げました。

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工藤
職人さんのデザインなんですか?
伊藤
そうなんです。デザイナーさんたちからは「ああしろ、こうしろ」は一切なく、「あぁ、だいたいいいね。もうちょっとだけここを…」というぐらいのレベルで、私たちも「それでいいの?」ということをよく聞いていました。

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工藤
試作品を見たとき、「かっこいい」と思いました?それとも「まぁ、こんなだよね」と、どういった思いでした?
伊藤
この方法は面白いなと思いました。最初はもうちょっと小さかったんですが、もしかしたら、定形サイズにするともっとかっこよくなるんじゃないかと思って、次の会議で定形サイズを用意してみたら「ほぼできましたね」という感じになりました。メモブロックに関しては、デザイナーさんにグラフィックを作ってもらったんですが、側面部分をきちんと表現できるようにしました。

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工藤
これはすごいですねぇ。
伊藤
いずれも職人が1冊ずつ手仕事で作ってるので、ものすごく時間がかかるんですよ。
工藤
色の出方とかも不思議ですが、これも断裁の美しさなんですかね。
伊藤
そうですね。紙のもつ凄さもそうですが、断裁によって作れるものだと思ってます。

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工藤
普通、こんな風にはならないですよね。
伊藤
そうなんですよね。御社でも裁断の包丁は、裏側はまっすぐ、手前側は段差となっていますよね。
その切った裏側の側面は非常にツルツルしていて。それはどこの断裁を使っていらっしゃる方も、感じていることだと思います。私は現場には入っていませんので、私が作っていたら、正直わからない部分だと思います。
その点ではやはり職人がそういったことをわかっていて、またそれをきちんとデザインとして表現する、ということに関しては、デザイナーさんがいたことで気づかされたものだと思っています。
工藤
これをやることで、社員が企画会議を見出され、職場は何か変わりましたか?
伊藤
今まで完全受注の産業の中の末端で仕事をしてきていたので、お客さんのいうことは確実に守ろうという意識は強くあったんですが、開発となると、当初から「お客様」という像が目に見えず、誰かが判断するとなると私たちの責任という点が引っかかっては、企画会議をしても「あぁ、そんなもんでいいの?本当にいいの?」と、すぐに気持ちがブレそうな状態になっていたんですよね。だけど、デザイナーさんが加わって、コンセプトをしっかり立ててくれたので、ブレることのないよう、そこにしがみつく思いで取り組むことができました。

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工藤
社員の皆さんは、すごく協力的でしたか?
伊藤
非常に協力的に考えてくれました。ただ、本当にこれで売れるのかというのは一切未知でした。特に企画中は、メモブロックの8mm台紙の高さについて、通常だと機械が壊れたり、物が壊れてしまったりと、懸念点があったのでデザイナーさんの意見に反対をしていたこともありました。それでもひとまず試しにやってみようということで職人に話を振ってみたところ、やはり職人は無理をしてでも作るんですよね。
反対していた職人もデザイナーの言う提案に対応してくれて、結果、デザイナーからの案のほうが美しいということになって…。
そんなことを経て、デザイナーの意見との歩み寄りもだんだんできるようになりました。
そんなこんなで、一年間の開発期間の予定でしたが、ほぼ半年で企画案が固まって、商品ができました。

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